親の遺品を整理していたら、見たこともない土地の権利証が出てきた。
登記の書類には地番だけが書かれていて、住所として調べてもその番号に行き当たらない。
聞けば、値上がりすると言われて買ったものらしい。
こういう土地を、どうすればいいのか?
先に結論を書くと、まずやることは場所の特定です。
値が付くかどうかも、手放せるかどうかも、どこの何なのかが分からないと決められません。
この記事では、なぜ場所が分からなくなるのかを先に説明します。
そのうえで、値段が付く見込みと、手放すための方法を、法務省が公表している件数で確かめます。
相談者父の遺品から、北海道の土地の権利証が出てきたのですが…



地番は書かれていますか? それが分かれば、登記簿は取れますよ。



番号はあります。ただ、その番号で調べても該当する場所が出てこなくて…



地番は住所とは別の番号なんです。まず法務局で公図を取ってください。
原野商法で買った土地は、いま何が起きているか?
そもそも原野商法とは何か? 国民生活センターの定義がいちばん正確です。
「将来の値上がりの見込みがほとんどないような原野や山林などの土地を、値上がりするかのように偽って販売する手口」とされています。
大事なのは「値上がりの見込みがほとんどない土地」という部分です。
そういう土地だと分かったうえで、値上がりすると言って売られました。
つまり最初から、資産としての値段は付いていません。
そして買った人が高齢になり、いま相続が起きています。
同センターの集計では、契約した人の年代は70歳代が約4割、60歳以上で約9割を占めています。
親の代で買われた土地が、子の代に回ってきているということです。
原野商法が行われた時期と地域
国民生活センターは、原野商法が1970年代から1980年代にかけて社会問題になったとしています。
いまから40年から50年前です。
買った本人がすでに亡くなっていることが多いのは、この時期のずれによります。
では、どこの土地が売られたのか?
それは、権利証や登記簿に書かれている地番でしか分かりません。
原野商法という手口に、決まった地域があるわけではないからです。
実際の相談では原野や山林が中心で、都市から遠く、当時は開発の話が語られた場所が並びます。
ただし、それを一般論で決めても手続きは進みません。
手元の書類に書かれている都道府県・市町村・大字・地番を、そのまま書き写してください。
その5つが揃えば、法務局で登記事項証明書を取れます。
交付手数料は、窓口での請求なら1通600円です。
買った土地の場所が特定できない理由
地番が分かっているのに現地にたどり着けない。
これには理由が3つあります。
- 地番は住居表示とは別の番号なので、住所の検索では出てこない
- 山林や原野には、公図の精度が低い地域がある
- 現地に境界杭も道も無く、外から見て区画が分からない
1つ目が最初の関門です。
私たちが住所として使っている「○○町3丁目5番12号」は住居表示で、登記に使う地番とは別に付けられた番号です。
別荘地や山林には住居表示が実施されていない地域が多く、その場合は地番がそのまま住所の代わりになります。
2つ目は公図の問題です。


公図は法務局で取れる図面で、土地の形と並びが描かれています。
ただし山林や原野では、明治時代の地租改正のときに作られた図面がもとになっている地域が残っています。
方位も縮尺も現況と合わないことがあり、公図だけでは現地に当てられません。
3つ目は現地の問題です。
原野商法で売られた区画は、道路も上下水道も引かれないまま線だけが引かれています。
現地に立っても、どこからどこまでが自分の土地なのか分かりません。
だから順番としては、次のように進めてください。
- 権利証や納税通知書から、都道府県・市町村・大字・地番を書き写す
- その土地を管轄する法務局で、登記事項証明書と公図を請求する
- 公図に載っている隣接地の地番も控えて、周辺の形を確かめる
- 市町村の税務課で、名寄帳か固定資産課税台帳を確認する
- 地番が分かったら、市町村の都市計画や航空写真と重ねて位置を絞る
4番目の名寄帳は、その市町村の中でその人が持っている不動産の一覧です。
相続人であれば請求できます。
親が同じ市町村に複数の区画を買わされていた場合も、名寄帳で一度に分かります。



1区画だけだと思っていたのですが、複数あるかもしれないんですね…



まとめて売られた例は多いです。名寄帳を取れば、その市町村の分は全部出てきますよ。
原野商法で買った土地に値段は付くのか?
結論から言うと、多くの場合は付きません。
先に書いたとおり、原野商法は値上がりの見込みがほとんどない土地を売る手口です。
40年たっても、状況はほとんど変わっていません。
それでも、目安を確かめる方法はあります。
毎年の課税のもとになっている評価額を見れば、市町村がその土地をいくらと見ているかが分かります。
ここで注意してほしいことがあります。
納税通知書が届いていない場合があります。
地方税法第351条は、同じ市町村の中でその人が持つ土地の課税標準額が30万円に満たない場合、固定資産税を課することができないと定めています。
免税点を下回っていれば、税金はかからず、通知も送られてきません。
だから「税金が来ていないから所有していない」とは言えません。
むしろ通知が来ていないこと自体が、評価額が30万円に満たないという値段の目安になります。
評価額を確かめたいときは、市町村の税務課で固定資産評価証明書を請求してください。
| 土地の状態 | 値段が付く見込み |
|---|---|
| 公道に接していて、地目が宅地 | 付く場合がある |
| 公道に接しているが、地目は山林・原野 | 隣接地の持ち主なら検討することがある |
| 公道に接していない山林・原野 | ほぼ付かない |
| 現地の特定ができていない | 査定そのものができない |
| 同じ市町村の分を合わせても評価額30万円未満 | ほぼ付かない |
表のいちばん下に当てはまる土地でも、隣接地の持ち主にとっては話が別です。
自分の敷地とつながる区画なら、まとめて持ちたい理由があります。
引き取り手として最初に当たるべきなのは、隣の区画の持ち主です。
隣接する区画の持ち主にとっては、自分の敷地が広がる話になります。
駐車場にする、庭を広げる、将来の建て替えのときに使う。動機が実際にあります。
管理会社に「隣の区画の持ち主に取り次いでもらえますか」と頼めば、連絡は付きます。
原野商法で買った土地を手放す方法
値が付かないと分かったうえで、それでも手放す方法は4つあります。
| 方法 | 持ち出し | 向いている場合 |
|---|---|---|
| 隣接地の持ち主に譲る | 登記費用のみ | 隣が自分の敷地を広げたい場合 |
| 買取業者に引き取ってもらう | 0円から | 接道があるか、まとめて処分したい場合 |
| 相続土地国庫帰属制度を使う | 審査手数料+負担金 | 相続で取得し、他に引き取り手がいない場合 |
| 自治体に寄付を申し出る | 申し出は無料 | 自治体が使う予定を持っている場合 |
自治体への寄付は、期待しすぎないでください。
受け取れば固定資産税が入らなくなり、管理の費用だけが増えるためです。
道路として使う予定があるなど、はっきりした理由があるときに限られます。
相続土地国庫帰属制度は、山林や原野でも通るのか?
相続土地国庫帰属制度は、相続で取得した土地を国に引き取ってもらう制度です。2023年4月に始まりました。
引き取ってもらえない土地の要件が決まっていて、別荘地では次の項目で引っかかります。
- 建物がある土地は申請できません。先に解体して更地にする必要がある
- 境界が明らかでない土地、所有権の範囲に争いがある土地も申請できない
- 担保権や使用収益権が設定されている土地は対象外。抵当権が残っていれば先に抹消する
- 通路など、他人による使用が予定されている土地も対象外。私道の持分が含まれていると引っかかる
- 土壌汚染や、管理に過分の費用や労力がかかる土地も引き取ってもらえない
費用は、審査手数料が土地1筆あたり14,000円です。承認されたら負担金を納めます。宅地などは原則20万円、森林などは面積に応じて算定します。
では実際に、どのくらい通っているのか?
法務省が運用状況を公表しています。2026年7月31日現在の速報値です。
| 区分 | 件数 |
|---|---|
| 申請件数(総数) | 5,863件 |
| うち地目が山林 | 893件 |
| 帰属件数(総数) | 3,008件 |
| うち種目が森林 | 199件 |
| 却下 | 85件 |
| 不承認 | 96件 |
| 取下げ | 1,102件 |


山林で申請されたのが893件に対して、森林として国のものになったのは199件です。
山林や原野は、宅地に比べて通りにくいことが数字に出ています。
理由は不承認の内訳を見ると分かります。
不承認96件のうち37件が「国による追加の整備が必要な森林」に当たったものです。
さらに46件は、地上に工作物や車両、樹木などがあって管理や処分を妨げる土地でした。
却下85件のほうも見ておいてください。
23件が「境界が明らかでない土地」、22件が「現に通路の用に供されている土地」です。
原野商法で売られた区画は、境界が明らかでないという理由でここに引っかかります。
だから場所の特定と境界の確認が、この制度を使う前の条件になります。
もう1つ、取下げ1,102件の中身が参考になります。
571件は「有効活用の見込みが生じた」ことによる取下げでした。
その例として、隣接地の所有者から土地の引き受けの申出があった場合が挙げられています。
申請の準備を進めるうちに、別の引き取り手が現れたということです。
国に引き取ってもらうより先に、隣と買取業者に当たる価値があります。



山林だと、国に引き取ってもらうのも簡単ではないんですね…



境界が分からないと、申請の前で止まります。だから最初にやることが場所の特定なんです。
そのまま放置するとどうなるか?
値も付かず、手放すのも面倒なら、置いておけばいいのか?
そうはいきません。理由が3つあります。
相続登記をしないと過料の対象になります
相続登記の申請は2024年4月1日から義務になりました。
不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請することとされています。
正当な理由なく怠った場合は、10万円以下の過料の対象です。
施行前に相続した不動産も対象で、その場合の期限は2027年3月31日です。
原野商法で買われた土地も、この義務の対象です。
値段が付かない土地だから登記しなくていい、という例外はありません。
所有者の欄が親の名前のままでは、隣の持ち主に譲ることも買取に出すこともできません。
代が変わるたびに、話し合う相手が増えます
登記をしないまま次の相続が起きると、権利は法定相続分どおりに分かれていきます。
子が3人いれば3人、その子たちが亡くなれば孫の代へと広がります。
売るには、その全員の同意と実印が必要になります。
40年前に買われた土地なら、すでに2回目の相続が近い時期です。
いま動けば相続人は数人でも、あと10年たてば十数人になっていることがあります。
買い取ると持ちかける電話が来ることがあります
そして、処分を考えはじめた頃に電話が来ます。
国民生活センターは、原野商法の被害にあった人やその土地を相続した人がもう一度だまされることを「原野商法の二次被害」と呼び、相談件数を公表しています。
| 年度 | 相談件数 |
|---|---|
| 2013年度 | 1,032件 |
| 2014年度 | 1,088件 |
| 2015年度 | 847件 |
| 2016年度 | 1,076件 |
| 2017年度(12月31日まで) | 1,196件 |
契約した人の年代は、70歳代が約4割、60歳以上で約9割を占めています。
公表されている手口は、大きく3つに分かれています。
- 売却を持ちかけながら、手続き費用や税金対策の名目でお金を請求し、売却と同時に別の土地を買わせる
- 購入希望者がいると説明して、調査費用や整地費用を請求する
- 覚えのない管理業者から、管理費の支払いを求められる
宅地建物取引業の免許を持っているからといって、うのみにしないこととも書かれています。
見分け方は単純です。
売る側なのに、こちらがお金を払う話になっていたら止まってください。
仲介なら報酬は売れたときに売却代金から支払いますし、買取なら業者がお金を出す側です。
先に測量費や広告費を求められる時点で、通常の売却の形になっていません。
おかしいと感じたら、消費者ホットライン188に相談できます。
同センターは、土地を買い取る、お金は後で返すと言われてもきっぱり断ること、根拠の分からない請求にはお金を払わないことを呼びかけています。
ここから先は、実際に手放すための窓口です。査定や相談は無料で、申し込んだからといって売らなければならない義務はありません。金額を見てから決めて問題ありません。
ただし、物件の場所・面積・管理費の滞納の有無は、最初に正確に伝えてください。後から出てくると話が止まります。
まとめ 原野商法で買った土地は、まず場所の特定から始めます
原野商法で売られたのは、値上がりの見込みがほとんどない原野や山林でした。
1970年代から1980年代の話なので、いまは買った本人ではなく子の代に回っています。
値段が付くことはあまり期待できません。
同じ市町村の分を合わせて評価額が30万円に満たなければ、固定資産税の通知すら届きません。
それでも放置はすすめられません。
相続登記の義務があり、代が変わるたびに同意をもらう相手が増えていくからです。
やることの順番は決まっています。
権利証から地番を書き写し、法務局で登記事項証明書と公図を取り、市町村で名寄帳を確認する。ここまでで、何をいくつ持っているのかが分かります。
そのうえで隣接地の持ち主に声をかけ、買取業者に値段を聞いてください。
国に引き取ってもらう制度は、境界が明らかでないと却下されます。
山林の申請893件に対して森林の帰属が199件という数字も、そのことを示しています。
最後に1つ。買い取ると言いながらお金を請求する電話には応じないでください。
売る側が先にお金を払う取引は、通常の売却では起きません。
別荘地全体の処分のしかたは 売れない別荘地の処分方法を、費用が安い順に並べました、相続の手続きは 別荘の相続手続きを放置するとどうなるか?登記義務化のあと に書いています。


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