建物を解体したあとの土地。あるいは、買ったまま一度も建てなかった区画。
この状態の別荘地は、建物付きの別荘よりも手放しにくくなります。
値段の問題ではありません。買いたい人の数がまったく違うからです。
建物付きなら「別荘が欲しい人」が買い手になりますが、更地だと「これから別荘を建てたい人」しか買い手になりません。
建物を解体しても、管理費がゼロになるわけではありません。
別荘地の管理費は土地の分と建物・水道の分に分かれていて、土地の分は建物が無くてもかかり続けます。
道路の維持や除雪、ごみの集積所の管理は、区画を持っている限り必要になるからです。
この記事では、別荘地の処分方法を持ち出しの少ない順に並べます。
そのうえで、手続きが止まる3つの原因と、国が引き取る制度が使えるかどうかを書きます。
最後に、別荘地の持ち主に来る勧誘についても書きます。国民生活センターが件数を公表しているもので、実際に相談が増えています。
相談者建物を壊せば売りやすくなると言われて解体したのですが、そのあとが動きません…



更地にすると買い手の層が変わりますからね。建てたい人しか来なくなります。



逆効果だった、ということですか?



物件によります。ただ、解体する前に土地としていくらになるかを聞いておくべきでした。
別荘地の処分方法を、費用が安い順に並べました
まず結論から出します。持ち出しの少ない順です。
| 順 | 方法 | こちらの持ち出し | 終わるまで | 向いている土地 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 買取業者に引き取ってもらう | 0円 | 1〜3か月 | どの状態でも相談できる |
| 2 | 隣地の所有者に売る・譲る | 登記費用の分担分 | 相手しだい | 隣が別荘を持っている |
| 3 | 仲介で売る | 仲介手数料+測量費 | 4か月〜1年 | 人気エリアで境界も確定している |
| 4 | 知人へ無償譲渡 | 登記費用の分担分 | 相手しだい | 使う予定のある人がいる |
| 5 | 相続土地国庫帰属制度 | 審査手数料+負担金 | 申請から半年以上 | 相続で取得。要件が厳しい |


建物付きの別荘と違って、3番の仲介が上位に来ないのがこの表の特徴です。
更地の別荘地は、そもそも仲介で扱ってもらえないことが多いためです。
引き取り手として最初に当たるべきなのは、隣の区画の持ち主です。
隣接する区画の持ち主にとっては、自分の敷地が広がる話になります。
駐車場にする、庭を広げる、将来の建て替えのときに使う。動機が実際にあります。
管理会社に「隣の区画の持ち主に取り次いでもらえますか」と頼めば、連絡は付きます。
建物のない別荘地は、なぜ処分しにくいのか?


理由は2つあります。買い手の数と、費用の下がり方です。
買い手の数がまったく違う
建物付きの別荘を探している人は、買ったらすぐ使えることを前提にしています。
更地を買う人は、そこから設計して、建てて、上下水道を引き込むところまで自分でやります。
別荘地に家を建てるとなると、本体の工事費のほかに次のものがかかります。
- 敷地の造成(斜面なら擁壁も)
- 上下水道の引き込み。本管が遠ければその分だけ距離に応じて増える
- 浄化槽(下水道が無い場合)
- 電気の引き込み。電柱から遠いと追加の工事が要る
- アプローチと駐車場の整備
つまり土地代がゼロでも、建てるまでにまとまった金額がかかります。
だから更地の別荘地は、値下げしても買い手が増えにくいのです。
価格ではなく、そのあとの工事費が判断を止めているからです。
固定資産税は下がっても、管理費は下がらない
建物を解体すると、家屋の固定資産税は無くなります。
土地のほうも、別荘用地にはもともと住宅用地の特例が無いので、自宅のように解体で税額が跳ね上がることはありません。
ただし管理費のうち土地の分は、建物が無くても発生し続けます。
那須の管理会社が公開している分譲地の管理費でいえば、土地の管理費だけで年8,400円のところから、70円/㎡(500㎡なら35,000円)まで幅があります。
道路の除雪も街灯も、建物があるかどうかとは関係なく必要だからです。
解体すれば出ていくものが半分になる、とはならない点を押さえておいてください。
別荘地の処分で問題になる3つ
手続きが止まるのは、たいてい次の3つです。
境界杭が見つからない
別荘地は分譲から数十年たっているところが多く、境界杭が失われています。
斜面の土が動いた、木の根に押された、落ち葉に埋もれた。理由はさまざまです。
建物が建っていれば、その位置からおおよその見当が付きます。
ところが更地だと手がかりが何も無い状態になります。
まず法務局で登記簿を取り、地積測量図が付いているかを確認してください。600円です。
図面が無い場合、測量には土地家屋調査士の報酬がかかります。地積更正登記の報酬は平均390,316円、中央値372,584円です。
50万円で売れるかどうかの土地に39万円をかけることになるので、ここで手が止まります。
いっぽう買取業者は、境界が未確定のままでも査定を出します。
私道の持分が整理されていない
別荘地の中の道は、公道ではなく私道であることがよくあります。
その私道が、分譲した会社の名義のまま残っていることがあります。
分譲会社がすでに解散していると、誰の許可を取ればいいのかが分からなくなります。
買う側から見れば、次の場面で困ります。
- 水道管を引き直すために私道を掘るとき
- 建て替えのときに、道路として認めてもらう手続き
- 工事車両を通すとき
持分があるかどうかは、公図と登記簿を取れば分かります。
管理会社の名義になっている場合は、通行と掘削の取り決めが書面であるかを聞いてください。
その書面があれば、買い手に見せられる材料になります。
管理会社が撤退している


いちばん厄介なのがこれです。
バブル期に分譲された別荘地では、管理会社が事業をやめてしまった例があります。
そうなると、道路と共用水道を維持する主体がいなくなります。
- 冬に除雪が入らないので、冬期は事実上入れない
- 共用水道が止まると、飲み水を確保できない
- 倒木や崩落が起きても、誰も直さない
- 所有者の有志で自治会を作って維持している場合もある
この状態の別荘地は、仲介ではまず動きません。
そして買取でも断られることがある数少ないケースに当たります。
自分の別荘地がどうなっているかは、管理費の請求が来ているかどうかで分かります。
何年も請求が来ていないなら、管理会社の状況を確かめてください。
一括査定と買取は、別のものです
一括査定は、複数の不動産会社に「いくらで売れそうか」を出してもらう仕組みです。売るのは買い手が見つかってからなので、買い手がつかなければいつまでも売れません。別荘や別荘地は、この「買い手がつかない」で止まります。
買取は、業者が直接買い取ります。買い手を探す必要がないので、その場で終わります。価格は仲介で売れた場合より下がりますが、売れない物件にとっては比較対象が「売れない」なので、実質的な損は出ません。
| 一括査定 | 買取 | |
|---|---|---|
| 相手 | 個人の買い手 | 買取業者 |
| 期間 | 数か月〜売れるまで | 数日〜数週間 |
| 価格 | 相場に近い | 相場より下がる |
| 売れない物件 | 止まる | 引き取れる場合がある |
売れない別荘地でも引き取ってもらえる場合
仲介で動かない土地でも、買取なら成立することがあります。
業者が見ているのは、売り直せる見込みがあるかどうかです。
| 条件 | 引き取られやすい | 断られやすい |
|---|---|---|
| 接道 | 公道か、持分のある私道に接している | 接道が無い。通行の合意も取れていない |
| 管理 | 管理会社が機能している | 管理会社が撤退している |
| 境界 | 地積測量図がある | 図面が無く、隣地と争いがある |
| 面積 | 分譲区画としてまとまっている | 細長い、極端に小さい |
| 地目 | 宅地 | 保安林など、伐採や転用に許可が要る |
| 権利 | 単独名義。相続登記も済んでいる | 共有者の一部と連絡が取れない |
右の列に当てはまっても、権利関係のものは時間をかければ解けます。
登記を入れる、連絡の取れない共有者を探す。手間はかかりますが、買取の対象には戻せます。
だから査定を断られたら、理由の内訳まで踏み込んで聞いてください。
土地の条件そのものが原因なのか、それとも書類が整っていないだけなのか?
後者だと分かれば、やるべき手続きが1つに絞られます。
別荘地の処分に相続土地国庫帰属制度は使えるか?
相続土地国庫帰属制度は、相続で取得した土地を国に引き取ってもらう制度です。2023年4月に始まりました。
引き取ってもらえない土地の要件が決まっていて、別荘地では次の項目で引っかかります。
- 建物がある土地は申請できません。先に解体して更地にする必要がある
- 境界が明らかでない土地、所有権の範囲に争いがある土地も申請できない
- 担保権や使用収益権が設定されている土地は対象外。抵当権が残っていれば先に抹消する
- 通路など、他人による使用が予定されている土地も対象外。私道の持分が含まれていると引っかかる
- 土壌汚染や、管理に過分の費用や労力がかかる土地も引き取ってもらえない
費用は、審査手数料が土地1筆あたり14,000円です。承認されたら負担金を納めます。宅地などは原則20万円、森林などは面積に応じて算定します。
更地の別荘地なら、建物があると申請できないという要件はすでに満たしています。
ただし、別荘地は他の要件で引っかかりやすいのが実際のところです。
| 要件 | 別荘地での引っかかりやすさ |
|---|---|
| 建物がある土地は不可 | 更地なら問題なし |
| 担保権や使用収益権が設定されている土地は不可 | 抵当権が残っていれば先に抹消する |
| 通路など、他人による使用が予定されている土地は不可 | 私道の持分が土地に含まれていると引っかかる |
| 境界が明らかでない土地、所有権に争いがある土地は不可 | 境界杭が無い別荘地はここで止まりやすい |
| 土壌汚染がある土地は不可 | 通常の別荘地なら問題になりにくい |
つまり別荘地でこの制度を使うなら、先に境界を確定させる必要が出てくることが多いと考えてください。
測量に39万円、審査手数料に1万4千円、負担金に20万円。合わせて60万円を超えます。
それでも毎年出ていく管理費と固定資産税を完全に止められる点は、他の方法にありません。
年10万円が出ていく土地なら、6年で払った60万円を取り返せます。
誰も受け取ってくれない土地では、費用を払ってでも所有権を手放せる唯一の方法になります。



買い手が見つからないなら、国に引き取ってもらうしかないのでしょうか?



その前に一度、買取の査定を取ってください。値が付けば、60万円払わずに済みますから。



更地でも値が付くことがあるんですか?



隣の区画とまとめて買いたい業者がいることもあります。聞くだけなら費用はかかりません。
「土地を買い取る」という電話には気をつけてください
最後に、別荘地や山林の持ち主に向けた注意です。
処分を考えていると、買い取ると持ちかける電話や訪問が来ることがあります。
国民生活センターは、原野商法の被害にあった人やその土地を相続した人がもう一度だまされることを「原野商法の二次被害」と呼び、相談件数を公表しています。
| 年度 | 相談件数 |
|---|---|
| 2013年度 | 1,032件 |
| 2014年度 | 1,088件 |
| 2015年度 | 847件 |
| 2016年度 | 1,076件 |
| 2017年度(12月31日まで) | 1,196件 |
契約した人の年代は、70歳代が約4割、60歳以上で約9割を占めています。
公表されている手口は、大きく3つに分かれています。
- 売却を持ちかけながら、手続き費用や税金対策の名目でお金を請求し、売却と同時に別の土地を買わせる
- 購入希望者がいると説明して、調査費用や整地費用を請求する
- 覚えのない管理業者から、管理費の支払いを求められる
宅地建物取引業の免許を持っているからといって、うのみにしないこととも書かれています。
見分け方は単純です。
売る側なのに、こちらがお金を払う話になっていたら止まってください。
仲介なら報酬は売れたときに売却代金から支払いますし、買取なら業者がお金を出す側です。
先に測量費や広告費を求められる時点で、通常の売却の形になっていません。
おかしいと感じたら、消費者ホットライン188に相談できます。
同センターは、土地を買い取る、お金は後で返すと言われてもきっぱり断ること、根拠の分からない請求にはお金を払わないことを呼びかけています。
宅地建物取引業の免許を持っているからといって、うのみにしないこととも書かれています。
ここから先は、実際に手放すための窓口です。査定や相談は無料で、申し込んだからといって売らなければならない義務はありません。金額を見てから決めて問題ありません。
ただし、物件の場所・面積・管理費の滞納の有無は、最初に正確に伝えてください。後から出てくると話が止まります。
まとめ 別荘地の処分は、建物付きより選択肢が少なくなります
建物のない別荘地は、買い手が「これから建てたい人」に限られるので、値下げでは動きません。
それでいて管理費のうち土地の分は、建物が無くてもかかり続けます。
持ち出しがいちばん少ないのは買取で、次が隣地の所有者への売却です。
隣は成立率が高い相手なので、管理会社に取り次ぎを頼む価値があります。
相続土地国庫帰属制度は最後に残る方法になりますが、境界が明らかでない土地は申請できないので、測量費まで含めて60万円を超えることが多くなります。
それでも毎年の支出を完全に止められるのは、この制度だけです。
そして処分を考えはじめると、買い取ると持ちかける勧誘が来ることがあります。
先に費用を求められた時点で、通常の売却の形から外れていると考えてください。
境界・私道・上下水道の確かめ方は 売れない別荘を処分するなら、値下げより先にやることがあります、持ち続けたときの年額と累計は 別荘が売れないまま管理費を払い続けると、総額はいくらになるのか? に書いています。





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