仲介に出したまま1年動かない。地元の不動産会社には「うちでは扱えません」と言われた。
そこで買取という言葉にたどり着いた方が、まず気になるのはここだと思います。
買取だと、いくらまで下がるのか。
たしかに買取価格は仲介より低く出ます。ただ、比べるべきは提示額そのものではなく、最後に手元に残る金額です。
仲介には仲介手数料がかかり、境界が確定していなければ測量の費用もかかります。買取ではその両方が要りません。
この記事では、仲介で1,000万円で売れた場合と手取りが並ぶ買取価格を、実際に計算して出します。
そのうえで、買取業者が何を見て価格を決めているのか、どういう物件だと断られるのかを書きます。
相談者買取だと相場の半分くらいになると聞いたのですが、本当ですか?



提示額だけを見るとそう感じるかもしれませんね。ただ、仲介のほうは手数料と測量費と税金が引かれます。そこを揃えて比べないと、判断を誤りますよ。



揃えて比べると、どのくらい変わるんでしょうか?



私の計算だと、仲介1,000万円と並ぶのは買取920万円あたりです。思ったより差は小さいはずですよ。
別荘の買取業者は、どこまでの物件を引き取るのか?


まず押さえておきたいのは、買取業者と仲介会社では立場がまったく違うということです。
| 仲介会社 | 買取業者 | |
|---|---|---|
| 立場 | 売主と買主をつなぐ | 自分が買主になる |
| お金の出どころ | 買主 | 自社 |
| 仲介手数料 | かかる(3%+6万円+消費税が上限) | かからない |
| 売れるかどうか | 買い手が現れるまで分からない | その場で決まる |
| 引き渡しまで | 4か月〜1年 | 1か月〜3か月 |
| 対象になる物件 | 買い手が付きそうな物件 | 再生・転売できる見込みがある物件 |
仲介会社が扱えないと言うのは、買いたい人を見つけられないからです。
買取業者が扱えると言うのは、自分で手を入れて、その先の買い手を自分で作れるからです。
だから別荘の買取業者は、仲介では動かない物件を主な対象にしています。
- 築40年を超えて、雨漏りや傾きがある建物
- 残置物が片づいていない建物
- 境界が確定しておらず、地積測量図も無い土地
- 私道にしか接していない土地
- 冬期に道路が閉鎖されるエリアの物件
- 建物を解体したあとの別荘地・山林・原野
ただし、何でも引き取ってくれるわけではありません。
別荘の買取価格はどう決まるか?
買取業者は、その別荘を再生して売り直すか、更地にして売り直します。
だから価格の決まり方は単純です。
売り直せる金額から、手を入れる費用と利益を引いた残りが買取価格になります。
買取業者が見ている6つの項目
| 見ているところ | 価格が上がる | 価格が下がる |
|---|---|---|
| 接道 | 公道に接している | 私道のみ。持分が無い |
| 上下水道 | 本管が引かれている | 井戸・浄化槽・汲み取り |
| 境界 | 地積測量図があり、杭も残っている | 図面が無く、杭も見つからない |
| 建物 | 築30年以内、雨漏りなし | 築40年超、雨漏りや傾きあり |
| 残置物 | 空になっている | 家具・寝具・食器がそのまま |
| 管理体制 | 管理会社が機能している | 管理会社が撤退。管理費の滞納あり |
この6つのうち、自分で先に確かめておけるのは境界と残置物と管理費の滞納です。
地積測量図の有無は法務局で600円、滞納の有無は管理会社に電話1本で分かります。
査定を頼む前にここを確認しておくと、話が一度で済みます。
仲介で売れた場合との手取り差
では実際に、仲介と買取のどちらが手元に多く残るのかを計算します。
前提は、相続した別荘で、親がいくらで買ったのかを示す資料が残っていない場合です。
取得費が分からないときは、売った金額の5%を取得費として計算することになります。
| 項目 | 仲介 1,000万円 | 買取 920万円 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 10,000,000円 | 9,200,000円 |
| 仲介手数料 | △363,000円 | 0円 |
| 印紙税 | △10,000円 | △10,000円 |
| 土地地積更正登記 | △390,316円 | 0円 |
| 登記に伴う実費・雑費 | △50,000円 | 0円 |
| 譲渡所得税(取得費5%) | △1,764,600円 | △1,773,400円 |
| 手取り | 7,422,084円 | 7,416,600円 |


提示額では80万円の差があるのに、手元に残る金額はほぼ同じになりました。
差を埋めているのは、仲介手数料36万円と登記費用44万円です。
つまり測量が必要な別荘なら、買取が920万円を超えた時点で買取のほうが手元に多く残ります。
もちろん、境界がすでに確定していて測量が要らない物件なら、この分岐点は上がります。
だからこそ、査定を頼む前に地積測量図の有無を調べておく意味があります。
一括査定と買取は、別のものです
一括査定は、複数の不動産会社に「いくらで売れそうか」を出してもらう仕組みです。売るのは買い手が見つかってからなので、買い手がつかなければいつまでも売れません。別荘や別荘地は、この「買い手がつかない」で止まります。
買取は、業者が直接買い取ります。買い手を探す必要がないので、その場で終わります。価格は仲介で売れた場合より下がりますが、売れない物件にとっては比較対象が「売れない」なので、実質的な損は出ません。
| 一括査定 | 買取 | |
|---|---|---|
| 相手 | 個人の買い手 | 買取業者 |
| 期間 | 数か月〜売れるまで | 数日〜数週間 |
| 価格 | 相場に近い | 相場より下がる |
| 売れない物件 | 止まる | 引き取れる場合がある |
別荘の買取業者に断られるのは、どんな物件か?


買取業者も、売り直せない物件は買えません。断られやすいのは次のような場合です。
- 接道が完全に無い(囲繞地で、通行の合意も取れていない)
- 管理会社が撤退し、道路と水道の維持主体がいなくなっている
- 管理費の滞納が数十万円規模で溜まっている
- 相続登記が済んでおらず、相続人の一部と連絡が取れない
- 共有者の一部が売却に同意していない
- 土砂災害特別警戒区域に指定され、建て替えができない
上の3つは物件そのものの問題で、下の3つは権利関係が整っていないという問題です。
そして下の3つは、時間をかければ解けます。
相続登記を済ませる、共有者と話をつける。手間はかかりますが、これで買取の対象に戻ります。
断られたときは、物件が原因なのか権利関係が原因なのかを必ず聞いてください。
そこが分かれば、次に何をすればいいのかも決まります。
別荘の買取業者を選ぶときに確認すること
買取は1社ごとに提示額が大きく違います。買い取ったあと、その業者がどうやって売り直すのかが違うからです。
リゾート物件を再生して売る業者と、山林をまとめて仕入れる業者では、同じ土地でも値の付け方が変わります。
だから確認するのは、価格よりも先にこの5点です。
- 別荘を実際に買い取った実績があるか。何件くらいか
- そのエリアで買った実績があるか
- 残置物をそのまま引き取ってくれるか。別途費用になるか
- 境界が未確定のままでも買ってくれるか
- 契約から決済まで何日かかるか
特に効いてくるのが3番目と4番目です。
残置物の処分と測量を売主の負担にされると、提示額が高くても、手取りは下の順位に落ちます。
提示額を聞くときは、必ず「この金額から、私が別に払うものはありますか」と確認してください。



1社だけ聞いて決めてしまっても、いいものでしょうか?



それはもったいないですね。別荘を扱った経験のある会社はそう多くないので、そもそも当たりに行かないと出会えません。



何社くらい聞けばいいですか?



3社あれば、その物件の相場観はつかめますよ。金額よりも、扱えると即答してくれるかどうかを見てください。
買取と仲介、どちらを選ぶかの分かれ目
ここまでの話をまとめると、選び方は1つの問いに収まります。
いつ終わらせたいのか。
| 仲介が向いている | 買取が向いている | |
|---|---|---|
| 時期 | 急いでいない | 支払いを早く止めたい |
| 建物 | 築30年以内で状態がいい | 築40年超、雨漏りや傾きがある |
| 境界 | 地積測量図があり杭も残っている | 図面が無く、杭も見つからない |
| 残置物 | 片づけられる | そのまま残っている |
| エリア | 通年でアクセスできる | 冬期は道路が閉鎖される |
| 相続人 | 自分1人 | 複数いて、これから増えそう |
右の列に当てはまる項目が多いほど、仲介で待っても結果は変わりません。
値下げしても同じで、買いたい人がいない場所では、価格を下げても買いたい人は現れてくれません。
別荘の買取を申し込んでから引き渡しまでの流れ
- 登記簿を取り、名義と地積測量図の有無を確認する(法務局・600円)
- 管理会社に電話して、管理費の滞納が無いかを確認する
- 複数の買取業者に査定を依頼する
- 現地を見てもらう。残置物や雨漏りは隠さずに伝える
- 買取価格と、売主が別に負担するものの有無を確認する
- 売買契約を結ぶ
- 決済・引き渡し(名義が親のままなら、この前に相続登記)
- 翌年の2月16日〜3月15日に確定申告
仲介と違うのは、3番目から6番目までが早く進むことです。
買主を探す時間が要らないので、査定から決済まで1か月から3か月で終わります。
止まるとすれば、相続登記です。
名義が亡くなった親のままだと、戸籍を遡って相続人を確定するところから始まります。
これだけで数か月かかることがあるので、心当たりがあるなら査定と同時に動き出してください。
ここから先は、実際に手放すための窓口です。査定や相談は無料で、申し込んだからといって売らなければならない義務はありません。金額を見てから決めて問題ありません。
ただし、物件の場所・面積・管理費の滞納の有無は、最初に正確に伝えてください。後から出てくると話が止まります。
まとめ 別荘の買取は、売れない物件のための仕組みです
別荘の買取価格は、業者が売り直せる金額から、手を入れる費用と利益を引いた残りで決まります。
だから提示額は仲介より低く出ます。ただ、仲介手数料と測量の費用が要らないぶん、手元に残る金額で比べると差は思っているより小さくなります。
今回の計算では、仲介1,000万円と買取920万円で手取りがほぼ並びました。
そのうえで確かめておきたいのは、地積測量図の有無と、管理費の滞納の有無です。
この2つは自分で調べられて、しかも査定額に直接効きます。
そして査定は1社で終わらせないでください。別荘を買い取った経験のある会社は多くありませんから、扱えると即答した会社が、その物件にとっての正解です。
手取りの計算の元になっている引かれるものは、別荘の売却で手元にいくら残るのか?相場と税金を実額で出します に一覧で書いています。







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