もう使わない別荘を、ただでいいから引き取ってほしい。
そう考えて知り合いに声をかけたのに、誰も首を縦に振らない。
親戚にも断られて、なぜだろうと思っている方は多いと思います。
私も同じことを考えた時期がありました。売れないなら、あげてしまえばいいと。
けれど調べていくうちに、断られる理由がはっきり分かりました。
0円でもらった側に、税金がかかるからです。
しかも1回きりの税金ではありません。受け取った年に贈与税と不動産取得税と登録免許税を払ったうえで、翌年からは管理費と固定資産税を毎年払い続けることになります。
この記事では、もらう側にいくらかかるのかを実際に計算します。
そのうえで、自治体に寄付できるのか、国が引き取る制度は使えるのかも書きます。
相談者友人に「別荘いらない?ただであげるよ」と言ったら、露骨に困った顔をされてしまいまして…



それはお友達のほうが正しいですね。無償でもらうと贈与税がかかりますし、名義を移す費用も受け取る側の負担になります。



えっ、0円なのに税金がかかるんですか?



はい。しかも別荘は税金の上で不利に扱われる場面が多いんです。金額を出してみましょうか。
別荘を無償で譲渡しても、もらう側にお金がかかります
まず、0円で譲り受けたときにかかるものを並べます。
- 贈与税(もらった財産の評価額にかかる)
- 不動産取得税(都道府県の税金)
- 登録免許税(名義を移す登記にかかる)
- 司法書士に登記を頼んだ場合の報酬
- 翌年からの固定資産税・都市計画税
- 翌年からの別荘地の管理費
上の4つは受け取った年に一度、下の2つは持ち続ける限り毎年かかります。
ここでは、土地の評価額300万円・建物の評価額100万円、合わせて400万円の別荘を例に計算します。
贈与税がいくらかかるか?
贈与税は、1年間にもらった財産の合計から基礎控除110万円を引いた残りにかかります。
親子や祖父母から成人した子への贈与は特例税率、それ以外は一般税率です。ここでは知人に譲る前提で、一般税率で計算します。
| 計算 | |
|---|---|
| もらった財産の評価額 | 4,000,000円 |
| 基礎控除 | △1,100,000円 |
| 課税価格 | 2,900,000円 |
| 税率と控除額 | 300万円以下なので15%、控除10万円 |
| 贈与税 | 335,000円 |
評価額400万円の別荘を0円で受け取ると、33万5千円の現金を用意しなければなりません。
しかも贈与税は、もらった人が翌年の2月1日から3月15日までに自分で申告して納めます。
譲る側が代わりに払うと、その分がまた贈与になります。
不動産取得税と登記費用
次に、都道府県が課す不動産取得税です。
税率は土地が3%、家屋は住宅が3%で住宅以外が4%です。
そして別荘は、住宅ではなく住宅以外の家屋として扱われます。
静岡県の説明にも「別荘は住宅用以外の家屋に含まれます」と書かれています。
つまり自宅なら3%のところが、別荘だと4%になります。
| 課税標準 | 税率 | 税額 | |
|---|---|---|---|
| 土地(宅地) | 300万円×1/2=150万円 | 3% | 45,000円 |
| 家屋(別荘=住宅以外) | 100万円 | 4% | 40,000円 |
| 不動産取得税 合計 | 85,000円 |
さらに名義を移す登記で、登録免許税がかかります。
贈与による所有権の移転は、土地も建物も不動産の価額の1,000分の20です。
売買で土地を買うときには1,000分の15の軽減がありますが、贈与にはこの軽減がありません。
| 課税標準 | 税率 | 税額 | |
|---|---|---|---|
| 土地 | 300万円 | 2.0% | 60,000円 |
| 建物 | 100万円 | 2.0% | 20,000円 |
| 登録免許税 合計 | 80,000円 |
ここまでを足すと、こうなります。
| もらう側の負担 | 金額 |
|---|---|
| 贈与税 | 335,000円 |
| 不動産取得税 | 85,000円 |
| 登録免許税 | 80,000円 |
| 受け取った年の合計 | 500,000円 |
| 司法書士に頼んだ場合の報酬 | 別途 |
| 翌年からの固定資産税・管理費 | 毎年 |


0円でもらったはずの別荘で、50万円が出ていきます。
断られるのは当然だと、私はこの数字を見て納得しました。
使っていなくても管理費は止まりません
別荘地の管理費も、リゾートマンションの管理費・修繕積立金も、所有している限り発生します。使っていないから払わない、という理屈は通りません。管理組合や管理会社は所有者に対して請求する権利を持っていて、滞納が続けば法的手続きに進みます。
そして区分所有法により、滞納された管理費は次の買主が引き継ぎます。だから滞納があると買い手はさらに見つかりにくくなり、滞納が増える。この循環に入ると、時間が経つほど手放しにくくなります。
別荘の無償譲渡が成立しにくい本当の理由


税金の話をすると、こう思う方がいます。
「50万円払ってでも、別荘が手に入るなら安いのでは」
たしかに使う予定のある人にとっては、その通りです。
成立しない理由は、税金そのものではなくもらってから先が続くことにあります。
- 別荘地の管理費が毎年かかる(年6千円のところも、15万円を超えるところもある)
- 固定資産税がかかる。しかも別荘の土地には住宅用地の特例が使えない
- 水道の基本料金と火災保険料がかかる
- 建物が傷めば、修繕するか解体するかを自分が決めることになる
- 手放したくなったときに、また同じ苦労をする
つまり無償譲渡は、負担の付いた資産を、そのまま次の人に渡す話です。
受け取る側から見れば、もらった瞬間に自分が同じ立場に立つことになります。
だから使う予定が本当にある人でないと、成立しません。
逆に言えば、その別荘を実際に使う人が身近にいるなら、無償譲渡はいちばん早くて確実な方法です。
自治体に別荘を寄付できるのか?
次に多いのが、市町村に寄付できないかという相談です。
結論から言うと、寄付を受けてもらえることは、まずありません。
理由は、自治体にとって受け取る動機がないからです。
- 自治体が持つと固定資産税が取れなくなり、税収が減る
- 道路や公園として使う予定がなければ、持っていても維持費だけがかかる
- 別荘地は民間の管理会社が道路と水道を維持しているので、行政が引き取る筋合いがない
行政目的で使う具体的な予定がある土地だけが例外です。
道路の拡幅にかかっている、避難路として必要になっている、といった場合です。
該当しそうなら、まず市町村の管財課に電話してみてください。無料で確かめられます。
ただ、期待して待つ選択肢ではありません。
別荘地や山林の無償譲渡は、さらに難しくなります
更地の区画だけを持っている場合の話です。解体済みのものも、初めから建てなかったものも含みます。
こちらは、建物付きよりもさらに引き取り手が見つかりません。
| 建物付きの別荘 | 更地の別荘地・山林 | |
|---|---|---|
| もらう人の動機 | そのまま使える | 自分で建てないと使えない |
| もらう人の数 | 少ない | さらに少ない |
| 贈与税 | 建物と土地の評価額にかかる | 土地の評価額にかかる |
| 不動産取得税 | 土地3%+家屋4% | 土地3% |
| 毎年の負担 | 管理費・固定資産税・水道・保険 | 管理費・固定資産税 |
負担は軽くなりますが、ゼロにはなりません。
そして使い道が思いつかない土地を、わざわざ税金を払ってもらう人はいません。
更地の別荘地は、無償譲渡ではなく買取や引き取りのサービスを探すほうが早く終わります。
一括査定と買取は、別のものです
一括査定は、複数の不動産会社に「いくらで売れそうか」を出してもらう仕組みです。売るのは買い手が見つかってからなので、買い手がつかなければいつまでも売れません。別荘や別荘地は、この「買い手がつかない」で止まります。
買取は、業者が直接買い取ります。買い手を探す必要がないので、その場で終わります。価格は仲介で売れた場合より下がりますが、売れない物件にとっては比較対象が「売れない」なので、実質的な損は出ません。
| 一括査定 | 買取 | |
|---|---|---|
| 相手 | 個人の買い手 | 買取業者 |
| 期間 | 数か月〜売れるまで | 数日〜数週間 |
| 価格 | 相場に近い | 相場より下がる |
| 売れない物件 | 止まる | 引き取れる場合がある |
別荘を無償で手放す前に検討する3つの方法
無償譲渡に走る前に、確かめておきたい方法が3つあります。
1. 相続土地国庫帰属制度が使えるか?
相続土地国庫帰属制度は、相続で取得した土地を国に引き取ってもらう制度です。2023年4月に始まりました。
引き取ってもらえない土地の要件が決まっていて、別荘地では次の項目で引っかかります。
- 建物がある土地は申請できません。先に解体して更地にする必要がある
- 境界が明らかでない土地、所有権の範囲に争いがある土地も申請できない
- 担保権や使用収益権が設定されている土地は対象外。抵当権が残っていれば先に抹消する
- 通路など、他人による使用が予定されている土地も対象外。私道の持分が含まれていると引っかかる
- 土壌汚染や、管理に過分の費用や労力がかかる土地も引き取ってもらえない
費用は、審査手数料が土地1筆あたり14,000円です。承認されたら負担金を納めます。宅地などは原則20万円、森林などは面積に応じて算定します。
解体費と負担金を足すと、それなりの金額になります。
それでも毎年出ていくものを完全に止められる点は、他の方法にない強みです。
相続で取得した土地で、建物がすでに無いなら、真っ先に検討する価値があります。
2. 隣地の所有者に声をかける
引き取り手として最初に当たるべきなのは、隣の区画の持ち主です。
隣接する区画の持ち主にとっては、自分の敷地が広がる話になります。
駐車場にする、庭を広げる、将来の建て替えのときに使う。動機が実際にあります。
管理会社に「隣の区画の持ち主に取り次いでもらえますか」と頼めば、連絡は付きます。
3. 買取業者に値段を聞く
そして、無償で譲る前に一度は値段を聞いてください。
0円で手放すつもりだったものに、値が付くことがあります。
仲介で売れないことと、買取でも値が付かないことは別の話です。
仲介会社は買い手を探す商売なので、探せない物件は扱えないと言います。
買取業者は自分で買って自分で売り直すので、手を入れて売り直せる見込みがあれば値を付けます。
聞くだけなら費用はかかりません。



0円のつもりだったので、値段を聞くという発想がありませんでした



私も最初はそうでした。ただ、聞いてみたら扱えると言う会社があって、結局そこで手放しました。



最初の不動産屋には売れないと言われたんですよね



そうです。あれは「その会社では扱えない」という意味だったんだと、あとから分かりました。
ここから先は、実際に手放すための窓口です。査定や相談は無料で、申し込んだからといって売らなければならない義務はありません。金額を見てから決めて問題ありません。
ただし、物件の場所・面積・管理費の滞納の有無は、最初に正確に伝えてください。後から出てくると話が止まります。
まとめ 別荘の無償譲渡は、相手の負担を先に計算してください
別荘を0円で譲っても、もらう側には税金がかかります。
評価額400万円の別荘なら、贈与税33万5千円・不動産取得税8万5千円・登録免許税8万円で、合わせて50万円です。
そこに司法書士の報酬が乗り、翌年からは固定資産税と管理費が毎年続きます。
断られるのは相手が冷たいからではなく、無償譲渡が負担ごと引き渡す話になっているからです。
だから、その別荘を実際に使う予定のある人が身近にいるかどうかで、成立するかどうかが決まります。
心当たりがないなら、隣地の持ち主に声をかけ、建物が無いなら国庫帰属制度を調べ、そして値段を聞いてみてください。
0円で手放すと決めるのは、値が付かないことを確かめてからで遅くありません。
引かれるものを入れた手取りの金額は、別荘の売却で手元にいくら残るのか?相場と税金を実額で出します に書いています。







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